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【読書感想】百年泥~混沌をそのまま物語にしたようなお話!~/【日記】読書感想文って読書欲削いでないか?

感想 この本をオススメしたい理由

今日は石井遊佳の「百年泥」を読んだぞ。

「百年泥」石井遊佳作 表紙

百年泥石井遊佳作 表紙



舞台はインド
主人公の「」は、サラ金を返す為にインドで日本語教師をしている。ある日、百年に一度の大洪水が起こり、百年分の泥が地上に掘り起こされる。同時に、百年分の人々の記憶が掘り起こされたのだった。人々は、思い出の品、生き別れた恋人、あり得たかもしれない人生を想って、泥を掘り続ける

 

感想…を言うのはなかなか難しい作品かもしれない。まさに「混沌」をそのまま物語にしたような感じで、あらゆるものが巡り巡る、輪廻転生と無常観を味わうことができました。読後感がなかなか良かったです。ページ数はそんなに多くないので、一気に読んだ方が世界観に浸れてより楽しいかも。

うん、そう、あえて言葉で感想を言う必要はないと思うんですよ。そもそも、言葉で言い表わせないから、物語にするんだと思うんですよね。「百年泥」の中にも、」がデーヴァラージ(「私」の教え子の一人で、非常に聡明である)の強い眼差しに”言葉を失う”シーンがあります。

デーヴァラージが「この(強い眼差しの)目は日本語でなんと言いますか」と尋ねると、「私」は「日本語にはありません」と答えます。

そう、言葉では言い尽くせないものってありますよね。”形容しがたい”って言葉もありますし。無理に言葉にしてしまえば、そのものの力は失われてしまうような気がする。
そんな、「言葉にはし難い」ものの集大成みたいな感じかも、このお話は。読書感想文の題材にするのはおすすめできないかもね!

ガンジス川の混沌とした雰囲気を味わいたい方におすすめ! 筆者はけっこう好きでした*^^*

 

おまけ ”言葉で言い表せられないから、物語にする”の元ネタ というか読書感想文へ物申す

先の感想に出てきた”言葉で言い表せられないから、物語にする”には、実は元ネタがあるんですよ。

理論化できないことは物語られなければならない”Byウンベルト・エーコ

記号論ウンベルト・エーコによる小説「薔薇の名前」のキャッチコピーです。

彼は研究者でしたが、論文では語りつくせない”こと”を小説にすることで語ろうとしたのです。それが「薔薇の名前」でした。薔薇の名前のあらすじはここでは述べませんが、めちゃくちゃ面白いんでぜひ読んでみて! 特に哲学や宗教が好きな人は必見レベルです! 人生観変わりますよ、大げさではなく! 筆者は高校生の時呼んで、衝撃受けました。我がバイブルの一つです^^

 

そう、何が言いたいかといいますとね、いちいち全部言葉にする必要はないってことです。本を読んだら毎回読書感想文を書かないといけないわけじゃない、何かに夢中になるのにいちいち理由はいらない、今自分がやっていることにいちいち動機はいらない。生きていると、何かと理由を聞かれることが多いですよね。「なぜ弊社を選んだのですか?」「どうしてその学校が第一志望なの?」「どうしてその漫画が好きなの?」「どうしてそのキャラが好きなの?」……ect

何か夢中になるときに、”何故”を説明できなくて夢中になれなかった経験はないですか? 人によるのかもしれないけど、筆者はそういう経験ありますよ。読書もそうでした。

 

小学校のころはとにかく活字が大好きで、暇さえあれば本を読んでいました。しかし中学以降はどんどん本を読む機会が減ってしまいました。

今思えば、中一の時夏休みの宿題だった「読書感想文」がターニングポイントだったかもしれない。中一の筆者はパールバックの「大地」を選びました。しかしこれがまたむつかしくて……、母に頼り泣きながら書きました。読書人としてのプライドがあったので、こだわったんですねえ。苦労はしたけどその分自信がありました。しかし、入選したのは自分ではなく他のクラスメイトでした。たしかに、拙い文章でしたし、入選しなかったことはよかったんですよ、別に。しかしね、気が付いてしまったのです。「自分は審査員の求めているものを書いていなかったのだ」とね。求められていたのは、「物語を自分の体験と結びつけること」だったんですね。「主人公は○○なところが偉い。自分もこういう人になりたい」「主人公の○○の経験は自分が昔経験したことと似てる」等々。一方自分は、「物語の解釈」を一生懸命書いてたんですよ。だからそもそも、求められていたものが違った。かなりの自負があったので、とっても悔しかったですねえ。そして子供心に読書に偏見を持つようになってしまったのです。「自分の身の為になるような読書をしなければいけない」とね。それ以降は、ただ楽しむだけの読書はよくないと思うようになってしまったんですよ。以前はファンタジーが大好きだったけど、手に取るのは妙に後ろめたい……。舞台が現代のものとか、世界の大作を読まないといけないのかなあみたいな。「子供向け」コーナーにおいてあったのも躊躇を加速させたかもしれないですねえ。

と、こんな感じで、若干読書から離れてたんですよねえ。読書感想文が完全に悪者とは言いませんけど、読書感想文は良い習慣とは思えないんですよね。子どもに読書をさせる機会として用意されてるんでしょうけど、逆効果だと思います。「読書は原稿用紙二枚分の感想を書かないといけないもの」って、逆に読書へのハードル上がっちゃうと思うんですよねえ。

読書はもっと気楽にやってほしい! 

アニメや漫画を見ることと大して変わらないんだぞ! と、ちょっと前までの自分含めて、みんなに知ってほしいです。読書=崇高な趣味って、心の中で思ってませんか? 読書=世界の著名な本を読むこと、とも思ってません? そんなことはない! 好きな風に読めばいいし、原稿用紙二枚分の感想を毎度毎度用意する必要はない。

むしろ、読書は読んだ先から忘れていくものだと思います。読んだそのときは「ふーん」で終わり。でも、ふとした弾みに思い出す。「そういえばこんな言葉があったなー、前読んだあの本かも」とね。なんかの曲の歌詞思い出すくらいのノリだよ。好きなアーティストの新曲にいちいち原稿用紙二枚分の感想書かないじゃん(書く人もいるかもだけど)。

 

グダグダ書いちゃったし、若干(というかけっこう)ひがみっぽい部分もあるけど、

とにかく、読書は気楽にやるもの! 自戒を込めて、世界中に発信しておきます

 

読書感想文で優秀作を取ることを否定してるように見えてしまうかもしれないけど、そんなことはないです。自分の経験と結びつけるのだって素敵な読み方だし、読書を自分の血肉にできたということなんだから理想的な読み方の一つだと思う。

ただ、読み方はそれ一つじゃないのに、読書感想文で目に見える形で評価されちゃうと、その読み方だけにとらわれてしまって読書のハードルが上がってしまうのが良くないなあという話です。

決して、優秀作を取ったヤツは間違ってる! なんてこと言いたいわけじゃないです。そこのところ、お願いします~